―吉乃川にとって、鷲頭杜氏とは?
「吟醸蔵」として長年吟醸酒を造ってきた吉乃川にとって、なくてはならない存在でした。父、鷲頭安太杜氏の跡継ぎとして若くから吉乃川の杜氏に就き、それ以来ずっと吉乃川のために尽力してくれました。昔は杜氏や蔵人は色んな蔵を渡り歩くのが普通でしたが、鷲頭杜氏はどこへも行かず吉乃川一筋でいてくれました、ありがたいことです。鷲頭杜氏の造った酒と酒造りへの姿勢が、今の吉乃川を支えてくれているんだと、私は思いますね。
―鷲頭杜氏はどんな方でしたか?
鷲頭杜氏の家は吉乃川の目の前にあって、朝早くから蔵に入っていました。味覚が澄んで研ぎ澄まされているうちに、朝から熱心に麹と酒を利いていたのが印象的でした。ただ、酒があまり強くないせいか、しばしば赤い顔で会議に出てきた事もありましたね。
人間関係では人とのつながりを大切にしていました。五十人以上いた蔵人をまとめる大変な役どころだから、腹を立てる事も多かったと思いますが、怒鳴った所を見た事はありません。おだやかで真面目な人でした。しかし、私が酒を評価して「もっと辛い方がいいんじゃないか」「すこし粗いんじゃないか」と言うと「はい、そうですね。」という割には何にも酒を変えてこない! 自分のペースで、思い通りの酒を造ることが信条だったんでしょう。(当時) 社長の私の話だって、関係ありませんね。そんな鷲頭杜氏だからこそ、私も信頼していました。本当に酒造りに生きていた人なんだと思います。
―もし、現在鷲頭杜氏とお会いできるなら、
何をしたいですか?
今の吉乃川の酒を飲んで、お互いに評価しあいたいですね。批判でもいい。正直な気持ちで吉乃川を、現代の酒を語ってみたいものです。吟醸酒を愛していたあの男が残した技と想いが、今につながっているという事を、実感させることが出来たらどんなに有難い良いことでしょうか。
代表銘柄である「極上吉乃川」の発売から30年が経ちました。
鷲頭の技術と熱意を継承した今の杜氏・蔵人たちが「越淡麗」を100%使用し、
吉乃川、そして鷲頭が常に追求してきた
「吉乃川らしさ」「飲み飽きないうまい酒」の原点に今一度立ち返った酒。
それがこの「極上吉乃川 鷲頭」です。
新潟の風土を愛した鷲頭昇一。
私たちは鷲頭の想いと技術を受け継ぎ、今日も明日もチャレンジを続けていきます。
皆さんが今日と変わらぬ「いつものうまい酒」を楽しく飲むことが出来るように。
【「鷲頭」揮毫の想い】 楽書家・今泉岐葉
楽書家・今泉岐葉
(Rakushoka KIYO-IMAIZUMI)
楽書とは、言葉のイメージに合わせて筆文字を表現する、デザイン&アート書道です。
2005年に「楽書家」として仕事開始。
現在「岐葉の楽書塾」を銀座、柏、我孫子で開講。カルチャーセンター講師。日本デザイン書道作家協会正会員。
吉乃川(株)の日本酒「中汲み」と「朱鷺」のロゴ。
料理の鉄人、笹岡隆次氏の新丸ノ内ビル「笹岡」にインテリア書「心」を揮毫。
ドイツ、ニューヨークでグループ展。
書道パフォーマンスは、そごう、イオン、結婚披露宴、震災復興イベントなどで経験多数。
楽器や歌や花や茶道などとコラボレーションも。