秋から春先まで約半年にわたる「造り」の時季は、だいたい午前中は酒造現場に出て、蒸米の具合や麹、もろみの様子を見て回る毎日です。午後からは、もろみの経過を記録したり、今後の打ち合わせをしたりというデスクワークもします。麹も酵母も生き物ですから、思うような酒に仕上げるためには、経過を見ながら現場で微調整が必要な時もあります。
その年の新米を使って、いち早く9月半ば過ぎから仕込む「新米仕込み新酒 吉乃川」という季節限定酒を毎年10月に出しているのですが、この酒造りは苦心しますね。
原料の米の性質は、年ごとに微妙に異なるものです。水分を吸収しやすいとか、仕込んだ後にもろみに溶けやすいとか、どんな性質の米なのかまだよく分からないなかで、「いつも通りの、うまい酒」を造る難しさがあります。
仕込んだもろみの発酵が進んで順次「搾り」の工程に入ると、毎日のように利き酒をして、できた酒の味を確認するのも杜氏の役目です。
旨味があって、でもすっきりとした、きれいな酒。飲んでまた自然と次に手が出るような酒が、吉乃川の伝統です。吉乃川の酒は独りでは造れません。蔵で働く皆の、それぞれの持ち場でやってきた確かな仕事があって、いい酒に仕上がるのです。
今期の酒造りに携わっているのは、20代の若い社員から、もう何十年もずっと吉乃川の蔵で働いてきた60代のベテランまで、幅広い世代がいます。若い世代は、先輩のやり方を見て学び、仕事を覚えていきます。
私自身がそうだったように、蔵の現場でともに働くことで酒造の技術だけでなく、代々の杜氏や蔵人が築いてきた“吉乃川イズム”というものも、自然と体に染み込んでいるのかなと思います。
吉乃川の伝統の酒の味は守っていきたいです。いい酒だと思っていますので。ただ、あえて精米を抑えた“黒い”米で、すっきりとした吉乃川らしい味わいの酒ができないものかと考えています。酒に雑味が出ないようにするには高精白の米を用いるのが常道ですが、例えば合わせる種麹を変えるなどの工夫で、味に汚れのないおいしい酒になるのではないかと。いろいろチャレンジしていきたいです。
いまの毎日を豊かにする「みなも」。
吉乃川30年ぶりの新ブランドです。
淡麗でありながらふくらみのある極みの一杯がその時をやさしく包み込みます。
「醸蔵」で造った
吉乃川のクラフトビール
よくあるご質問やキャップの開け方に関するご質問を掲載しています。
吉乃川が美味しく飲めるお店をご紹介しております。
2017~2024年に行ったフォトコンテストの作品アーカイブ集です。
吉乃川敷地内に「吉乃川 酒ミュージアム『醸蔵(じょうぐら)』」がオープンします。